高まるインフレ圧力

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EUに加盟している各国は、国債発行をGDP比3%までと財政と支出の均衡をとることを条件とし、これを背景にどこかの一国がEU全体の信用を低下させることを防止している。最近話題になっているEU加盟のギリシャがGDP比12%程度の水準となったことにより、EU加盟各国より均衡水準にまで持っていくことを求められ、社会保障費を削減して均衡にもっていく方針を示した。


現在の日本国債の発行比率は、2008年度でGDPの170.9%。今年の緊急経済対策にて国債が大きく発行されたためと世界的な景気後退により、2009年度は180%程度の数字に急上昇するものと推測される。来年度予算編成についても不安要素だらけで、政権交代という目的を同じくして集まった民主党はその目的を果たしたあと、各議員の思惑の違いから、統制がとれずに非常に危険な状態となっている。このままでは様々な方向に舵をこぐ船のようで、なにも決まらずに時間ばかりが過ぎることが容易に考えられる。
このことから、日本は来年2010年にも「政府への信用不安」「世界的にみても破綻している水準である財政問題」によって日本の信用は国際的に失墜し世界中の投機マネーは日本から引き上げることになる。そのことを裏付けるように3年前より日銀による国債の買取実施が始まっている。中央銀行による国債の買取は紙幣通貨の信用不安と直結するため、コントロール不能な急激なインフレとなる。そもそも日本銀行は金本位制を昔より布いていないため金の備蓄量は少なく、その紙幣価値の裏付け背景が乏しいのである。
既に始まっている日本国債10年物の金利上昇により、来年にも消費税収のほとんどは国債の利払いに充てられている状況になることから、日本政府の2011年度の財政収支の急速なる悪化によりディフォルトを回避することは困難になるとみられる。
日本国債は、日本国内の金融機関および個人(日本人)がその大半を買い支えているという末期状態となっている。この仮にためディフォルトを行った場合でも、政府は金融機関への支援をデノミ後の新通貨で行うだけで経済的には支えることができる。個人国債を購入した人は残念だが過去の歴史からみて支援されたケースはほとんどない。住宅ローンも急激なインフレによって無価値となるので、個人にとっては借金がチャラとなるまたとない機会でもある。
冷静になり日本がディフォルトを起こして困る人はだれか。政府、大企業、中堅・零細企業、個人。個人のうち過去に蓄えた資産で生活をしている高齢者が直撃となるが、それ意外の人たちにはメリットのほうが大きくなる。また社会主義的な発想を好む日本人としては、ディフォルト後にやってくる貧富の差が縮小することに歓迎の念を持つことさえあるのではないだろうか。
高齢者への対応は、今後大きな課題だ。戦後の焼け野原で物資に乏しかった日本を一時は、世界第二位の経済大国に押し上げた功労者だ。そうした人たちを無下にすることは決して許されることではない。ディフォルトを起こした後の社会は、消費税を国債利払に回すことがないようにすることができるため(借金踏み倒しなので)、消費税を社会福祉税化することが可能なはずだ。医療については、今後キューバほどでないにしても社会全体による医療制度の再編成が(医師への待遇も含めて)再検討されなければならない。
ディフォルトによって日本の信用力が低下すれば、1ユーロ300円や1000円という円安水準となるため、輸出産業が活況となり大きく雇用が生まれるはずだ。日本がディフォルトとなると、日本銀行が保有する米国債(総発行の約16%を日本が保有)が市場に出回る危機感から米国の国債もディフォルトとなる可能性が高まる。今年、米国はGDP比70%ほどの国債発行を行っているからだ。
私は、日本が保有する米国債を市場で売却することなく、直ちに「日本に駐留している米国軍隊すべての国内からの撤収を条件に、米国債を無償で米国に譲渡する」という表明をすることにより、日米同時ディフォルトは回避できると考えている。その鍵は日本が握る。米国がディフォルトとなるとインフレ下の日本企業による輸出先が大きく減ってしまうため、国内で大きな反発が生まれることが予想されるためだ。
先週放送されているBSフジのPRIME NEWS、今日の日経朝刊を見ても私と同じ考えのひとが多いことに驚かされる。一時的に経済が大きく混乱し失業率が跳ね上がることになるため、現実になって欲しくない気もするが、その後を考えると自然の法則なるかもしれない。国債金利上昇を抑制するために紙幣発行を抑制して市場にお金が流れない現状においては、デフレは止まらない。テクニックによる延命は人々を決して助けることにはならないことを日本銀行、政府のひとたちは早く気がついて欲しいと願うこのごろだ。
今一度「プライマリーバランスをとる」という基本的な社会行動に立ち戻って、政府、企業、個人が行動を起こすときにきているといえる。まさに「The party is over」だ。

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